ファティ・アキンの新作映画「消えた声が、その名を呼ぶ」(原題:The Cut)を観てきた。トルコ人御法度のアルメニア人ジェノサイドが舞台。虐殺を生き延びた主人公が生き別れた双子の娘を探してオスマン帝国、レバノン、キューバ、アメリカへ向かう。どん底を味わった主人公が、娘たちが生きていることを知り、苦境を抜けだし、旅を続ける。主人公はアルメニア人だが、世界中のどんな親子でもあり得る普遍的なストーリー。「母を訪ねて三千里」の親子逆転版とも言えそう。
監督自身「西部劇」と呼んでいるようだが、アナトリアの砂漠から雪のアメリカと移動するのはまさに西部劇の世界。音楽はアインシュツェルツェンデ・ノイバウテンのアレキサンダー・ハッケ。最初はちょっとオルタナブルースすぎるかなと思ったが、舞台が中東から新大陸に移る頃には、トルコ音楽もかじっているニューウェイブ出身男ハッケで丁度良く思えた。
アルメニア人が主人公だけに「マカロニ・ウェスタン」ならぬ「マンティ・ウェスタン」か。あ、マンティというのは僕のサイトをご覧の方はご存じのアルメニア人の大好物の小さなラビオリ。トルコ語ならマントゥのことね。
追記:おお、主人公ナザレットを演じるアルジェリア系フランス人俳優タハール・ラヒムはモンペリエのポール・ヴァレリー第三大学卒業だ! 僕は半年だけ外国人コースに通ってたんです。
それから主人公の奥さんラケル役はなんとモロッコ系フランス人歌手のヒンディー・ザハラが演じていた! 彼女が歌っているのだから、アルメニアの短い民謡を歌う歌声が心に残るのは当然か。