旅行記
Travelog

インド旅行記・デリー編2 ミディバル・パンディッツ

 夫のデリー滞在の大きな目的の一つはミディバル・パンディッツに会って話を聞く事だった。果たして彼らがデリーにいるかも解らない、出発前にメールしていたのだが、とりあえず着いたら連絡してとの一言だったのだ。
 着いてすぐに、事前に知らされてあった彼の携帯に連絡すると、今夜家に来いというお返事。ホテルの主人に住所を告げて場所を訪ねるとかなり郊外の方らしい。オートリキシャでは無理なのでタクシーを頼んで現地へ向かう。渋滞を抜けて1時間ほど走るとこ綺麗で閑静な住宅地にやってきた。東京で言うと成城学園とか田園調布って感じなのかな?デリー在住でここまでエッジの立った音楽を作っているのんだから相当いいとこのぼんぼんなんじゃないかと、実は彼らの家に行くのを密かに楽しみにしていた私。たどり着いたのは大きな敷地の中にいくつもマンションが建ち並び、スーパーや電話屋まである小さい街のような所。マンションの一階小さな庭付きの部屋にメンバーの片割れゴーラブが住んでいた。ベルを鳴らすと、ゴーラブの従兄弟という青年が現れた。彼は今、人を空港へ迎えに行って留守だと言う。再度携帯に電話すると、メンバーのもう一人タパンの家に行ってくれとのこと。しかし、彼のお部屋素敵でした。その素敵さがいかにもお金持ちって感じじゃなく、そこだけ切り取れば東京やパリのクリエーターのお宅訪問って記事に載ってそうなさりげなくセンスのいい、押さえた趣味の部屋であることに驚いた。白い壁に真っ赤なソファと大きなガラスのテーブル、お気に入りのポスターやポストカードが壁に飾られ、飾り棚には色の綺麗な洋書や小物が置いてある。おまけにお洋服を着せられた白い犬までいる。インドの道ばたにいるような薄汚い野良犬じゃないんだから!そこで彼はDJの友人と部屋をシェアして住んでいるようだった。
 ゴーラブの従兄弟といい、この同居人のDJといい、道ばたでポン引いてくるインド人とは全く別人。髪型から服装の着こなしかたまで、渋谷や下北あたりをうろついてるレコ好きのお兄ちゃん達と変わらないのだった、ただ顔がインド人なだけ。パハールガンジからここにやってくるとなんだか急に別の国にワープしたような錯覚を覚える。


路上でヘンナ



 さて、ここをすぐおいとまして、タクシーでタパンのマンションに向かうと、驚いた事にそこにカーシュ・カーレイが居たのだった!空港に迎えに行っていた人ってカーシュだったんだ。彼とはベイルートと東京で2度会っている、偶然の再会に大喜びの私たち。聞けば週末のクラブイベントのDJの為にムンバイからやってきたのだと言う。彼らのDJも聴けるとはラッキーだ、旅の神様も私たちを見捨てていなかったのね。なんだか今回の旅はつらーい日々の中で時々きらっきらっと幸運な偶然に出会うという感じだ。こういう偶然があるのだから、ちゃんとインドは私たちを呼んでくれていたのだろう。
 それにしても、このタパンの部屋も広くて素敵なところだ。彼も友人と部屋をシェアしているようだった。仕事部屋には大きな机の上にパソコンが2台と機材がいくつか、周りにCDやら雑誌が散乱していて、壁には自分たちのクラブイベントのポスターが。これまた世田谷の友達の家にでも行ったかのよう。むしろ、それよかずっと広くて綺麗だけど。何しろインドだから小間使いがいて、私たちにチャイを作ってくれたり、細々働いている。だから野郎の部屋なのに妙にきちんと整頓されているのだ。
 カーシュが来ているということで、彼らの友人達も集まっており、部屋は和気あいあいと楽しい雰囲気に満ちている。そこで2時間ほどインタビューを交えながらおしゃべりをする。なんかこういう空間落ち着くなあ。もちろん日本と違ってこういう人の生活って庶民とかけ離れてはいるのだろうが、話をしているとぼんぼんが左うちわで音楽制作と言う訳でもなく、ゴーラブはDJ歴13年のベテラン。タパンは別な仕事で稼ぎながら作品を作っているらしい。彼らの生活だけを見ると本当に自分たちとスタンスが変わらないのだ。ただそこがインドだというだけで、私たちは彼らを特別だと思う。インドという国は日本と何もかも違う(違いすぎる)、人も食事も宗教も。一歩外に出ると道ばたで寝起きする人や野良牛がいる世界、それでも音楽に関して言えば彼らと我々は沢山の共通の話題がある。同じような音楽を聴き、同じような部分に感動する。それがとても奇妙で同時にうれしい。
 彼らと別れた後、パハールガンジの安いだけがとりえの外人向け食堂で食事をする。西洋人のグループがテレビから流れる映画シーンを見ながら「ださいわねえ」とハナで笑っている。チッチッチ、君たち一元的なインドを見てはいけないよ、と私は密かにほくそ笑む。 


デリーマッシヴ