旅行記
Travelog
インド旅行記・カルカッタ編 6 ザキールのコンサート
冬場はコンサートが始終行われているらしいカルカッタであるが、毎日新聞を見てもそれらしい情報があまり見つからない、どうやってコンサート情報を仕入れるのかと湯沢さんに聞くと、「なんとなく先生から教えてもらったりとか、まわりから入ってくるんだよね」とのお返事。今日もこれあるよ、とベンガル語だけのチラシを見せてくれた、もちろん私たちは誰が出るのか判別不能。会場がどこにあるか彼も分からないと言う。それでもタクシーの運転手にチラシを見せて行ってみることにする。今回は湯沢さんがいないと全然どこへも行けない我々であった。(のちにテレググラムという新聞に割と情報が載っていることが判明)
コンサート会場はどうってことのない町外れの小さな公民館のようなところだった。入場は無料。床にマットを敷き、地べたに座って鑑賞する。南インドではけっこうこぎれいにした、上品そうな老人が多かったが、ここの会場に集まってる人たちは、もうちょっと庶民的。といっても街で目をぎらぎらさせて近づいてくる客引きみたいな人種はいない。インドといっても適度で落ち着いた雰囲気なのだ。
入場無料でも内容はなかなかだった。フォーク・ギターを古典用に改造して弾くおっちゃんが出てきて(ライ・クーダーとも共演したひとらしいのだが、名前分からず)、びよ〜んと音を出した瞬間にその音の深さに異次元に飛ばされそう......なんて大げさだけどシタールもそうだが倍音ものは聞いているうちに眠くなって意識が朦朧としてくるんだよね。しかしそれにしても1曲長過ぎる。終わりそうで終わらないアーラープ(リズムなしソロの部分)が40分そこからタブラが入って、また少しづつ盛り上がって超絶のクライマックスにだんだん近づいていって、それがまたしばらく続いて、結局1時間半近く。なんか南のカルナティックよりお腹いっぱいになるんだな〜。カレーと一緒でこってりしてるんだ。カルナティックの方がもうちょっとアーラープも短い気がするし、リズムパートも2種類以上あって、バラエティな感じであっさり聴ける。やっぱ南より北の方がより度が過ぎてるということか。
さて、そのこってり音楽を消化せぬまま翌日は、とうとうザキールフセインのコンサートなのである。しかもオールナイト!といってもザキールが出ずっぱりじゃなくて1時間半づつ5組くらいが出るわけ、湯沢さんの師匠もトリで出るらしい。 9時頃からゆるゆる挨拶が始まって(インドの催し物ってこれが結構長い)ボーカルが2組続いたあと夜中1時半くらいにシブクマール・シャルマと息子のラフール&ザキールの演奏が始まる。長過ぎるソロが続いたあとやっとタブラ登場。彼が叩き出すと会場が一斉に盛り上がる。今回素晴らしいタブラのプレイをいくつも聴けたけど、ザキールのタブラの音って他とは違う華があるというか、メリハリもすごいし、切れが良すぎ。ゆるく叩いて一気に超絶テクに持って行ったり、止める時も鮮やかにパキっと止める。その繰り返しで聴いてる方は完全にはまってしまう。前の席に座っていたタブラ好きらしいお兄ちゃんたちは、ザキールが技を決めるたびに拍手喝采、興奮した面持ちでわーわー盛り上がりまくっている。まるでロックスターのコンサートのようである。まあ、私達こうしてインドまで彼の公演を聴きにきてるんだから相当な物好きというか、追っかけグルーピーみたいなもんですか。
終了後一言挨拶したいので、舞台裏まで行ってみる。この時止められないために、以前ベイルートで彼にインタビューしたときに一緒に撮った写真を持ってきたんだ。(この写真はラージャスターンでも大いに役立つ)でも、インドすごいところはこうして公演終了後勝手に舞台裏に上がり込んでも誰も文句を言わないことなのだった。舞台裏にはそうして上がり込んできたファンにとりかこまれ、ザキールの姿が見えない。しかしなんとか彼と目をあわせると、彼は顔を覚えていてくれた(聞くところによれば、彼は会った人の顔を絶対忘れないらしいのだ)しかしいつもはにこやかな彼も、その日は憔悴しきった様子で、疲れて座り込みフラッシュは勘弁してと言う。演奏が今まで見た中で一番素晴らしかっただけに、憑き物が落ちたようなような様子に、ただならぬすごみを感じてしまう。何回観てもこの人の演奏はすごい。
その後は興奮覚めやらず、会場のテラスで楽器を習っている外国人達とおしゃべりをする。みんな大感動しまくっていて、話が止まない。「ザキール観たの何回目?」などどいう会話が飛び交う。みんなかなりの好事家ですね。当然次の演奏家はカスミまくっていて、立場つらそう・・。 私は彼の演奏を聴けただけでもう十分満腹だったのだが、師匠も出る事だし、とりあえず最後まで聴く。といっても私はもうこれ以上音楽を聴く気力が残っておらず、会場で爆睡しちゃったんだけど。トリの師匠の演奏が終わったのが朝6時前。いや〜疲れました。インド人のやることって何もかも濃いんだよね、この人達って日本人の3割増しくらいのテンションで普段から生きてるんだろうな。