Duplessy & the violins of the world / “CRAZY HORSE”

先日、武蔵野市民文化会館で観た「デュプレッシーと世界の弦楽器奏者たち」凄まじかった。
ノルマンディーのギタリスト、マシアス・デュプレッシーが中心となり、エンフジャルガル・ダンダルヴァーンチグ(馬頭琴)、グオ・ガン(二胡)、アリオチャ・レグナルド(ニッケルハルパ)が集った世界伝統弦楽器カルテット。ステージは一人ずつのソロ演奏からスタート。一曲目のグオ・ガンによる二胡の演奏からガツンと持っていかれた!馬の鳴き声からギャロップ、自然音まで模写するような音色とメロディーをかき鳴らし、一人で一つの楽器を演奏しているとは思えないほど立体的な超絶演奏。その後のニッケルハルパ、馬頭琴もそれぞれに倍音やホーミーまで駆使したパッキパッキの演奏。主役のマシアス・デュプレッシーも今回の日本公演のために作ったという、1910年代にパリに暮らした藤田嗣治にインスパイアされた曲も素晴らしかった。日本的な陰音階のメロディーが中間部でパリのヴァルス的に転調していく。
長年、世界の伝統音楽を定点観測してきた身としては「デュプレッシーと世界の弦楽器奏者たち」は大満足だった。インドに行っても、トルコやイスラエルに行っても、WOMEXで世界の様々な地域の音楽を見聞きしても、最前線で活躍している伝統楽器の演奏家の多くは超絶、超高速、豪腕、もしくは宇宙的な演奏をしていて、ロックやジャズやヒップホップやテクノなどと同じ層のお客さんを奪い合い(分け合い?)してサバイブしている。「伝統楽器=癒やし、悠久の、大地の、のんびり、リラックス」みたいのは全く通用しない。別に音がうるさいのや速いのが良いと言ってるわけじゃないけど、一曲目からガツーンと頭蓋骨を叩いてくれるような演奏じゃないと、国境や人の心に張られた壁は超えられないということ。
そして、恥ずかしながら、近くに住んでいながらも武蔵野市民文化会館に行ったのは初めて。日本では無名の音楽家の公演なのに、ほぼ満席で、聞いたところではホールの定期公演にお客さんが付いているとのこと。スケジュールを見ると、クラシックを中心に世界の伝統音楽も時々プログラムされている。しかも入場料が2000円前後と格安なのだ。中央線は文化度が高い、と昔から言われるが、こうした古典〜伝統音楽のプログラムについては恥ずかしながら今まで気づかずにいました……。


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