根本敬さん「映像夜間中学」を終えて

昨夜7/31金曜、渋谷アップリンクファクトリーで根本敬さんの「映像夜間中学」へのゲスト出演をしてきました。根本さん、アップリンク倉持さん、来て下さった皆様、ありがとうございました。

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思い起こせば、高校生の頃から、「生きる」「21世紀の精子異常者」「ディープコリア」「因果鉄道の旅」「電気菩薩」「豚小屋発犬小屋行き」「夜間中学」「亀の頭のスープ」「人生解毒波止場」「寒くないかい」など根本さんの数々の作品に親しんできました。そんな、いわば人生の師とも呼びたい人の横で、オレは一体何を話せばいいのだろう? 何を話す意味があるだろう?と数日前から悩んでしまいました。しかし、色々考えても良い案が浮かばなかったので、前日になって、基本に立ち返ることにしました。
基本に立ち返ると、根本さんにおける韓国とポンチャックにあたるのが、僕にとってボリウッド音楽、そしてモロッコ音楽だと気づき、昨夜は、それらを中心に新しくて、ダサくて、ローカルな臭み満載の音と映像をたっぷり楽しんでいただきました。

そんな昨夜の「映像夜間中学」を見て、僕やCOMPUMAやその他諸々のアングラ音楽系人間のマネージャーを一手に引き受けるライトエージェンシー森さん曰く「いちいちトンネルを抜ける所から話を始めるのが良かったですね」とのこと。これは僕が最近出会った注目すべきイイ顔オヤジの最高峰、奥日光のすいとん屋ツネさんの話を始める際に、常に奥日光に抜ける30年ほど前に山にぶち抜かれたトンネルの写真からスタートしていたのです。先月から三回ツネさんの所を訪ね、三回ともその集落の手前にあるトンネル内部で写真を撮っていたので、それを三回とも話の出だしとして、僕は投影していたんです。

奥日光のすいとん屋店主ツネさん 90歳 コロボックル 職種:狩猟採集略奪
奥日光のすいとん屋店主ツネさん 90歳 コロボックル 職種:狩猟採集略奪

それを見たせいか根本さんも「前日に手に入れたばかりなんですけど」と言いながら、遠縁の親戚が1990年に九州の結婚式場で行った結婚式を収めたDVDを早送りで延々と早送りしながら、5分以上無音で上映し、最後の最後に新婚夫婦が「マイ・ウェイ」をキーボードと歌で共演するところまで見せてくれました。

「昨日、わざわざ他人の25年も前の結婚式のビデオを最初から最後まで観続けたんですか?」と根本さんに尋ねると、根本さん曰く「観なければわからないから。観た時は意味がわからなくとも、20年後にフと腑に落ちることがある」とのこと。何が言いたいかと言えば、ツネさんのすいとん屋に行くには、高速で日光まで行き、その後延々と続く日光のつづら折りを抜けて、最後に30年前に開かれた山をぶち抜いたトンネルを抜ける。そうやって初めてツネさんのすいとん屋に着くわけ。だからトンネルは何かのイニシエーションのようなもので、それは根本さんが延々と早送りで見せてくれた結婚式の親戚挨拶や友人のカラオケ大会や、その他のどうでもいい、今は既に亡くなっているだろうオヤジやババアたちの隠し芸、それらを全て通って初めて、若ハゲの新郎がキーが高すぎて歌えない「マイ・ウェイ」にたどり着くのと同じってことかなあと、勝手に解釈させてもらいました。

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とにかく、長年敬愛していた根本さんに、先日の中東料理会に続き、トークショーでもご一緒させてもらい、エキゾ音楽を掘り続けてきて本当に良かったなあと思った次第です。

写真はサインまでいただいた「元祖 ディープコリア 本家 観光鯨狩りガイド」です。我が家には三冊目となるディープコリアです。

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根本敬さんのサイン 「今日の良き日に」と書いていただいた
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最新版(左)と2002年の第二版(初版は棚から見つからず)

 

最後にちょっとイイ話:そういえば「でも、やるんだよっ」が日本のどこかの青年会議所か何かのスローガンかなにかに選ばれ、根本さんに連絡が来たので、快諾したそうです。しかし、連絡してきた方たちは、その言葉の背景が書かれた「因果鉄道の旅」(しおさいの里だの、内田剛史だの、ユン・ソンスクだの含む)を読んでいなかったんだそうです。読んだ後も「でも、やるんだよっ」を使いたくなるか、それともやっぱり止めておこうと思うのか? 「いやあ、どちらでもイイんです」と根本さん。おお、作品は完成した段階で作者の手は離れるということですね!

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